食と自制心(2000年4月号)
今を時めくキムタク。彼は現代人に最も好まれ、また今後益々増えるであろう若者のタイプだといいます(NHKテレビより)。その特徴は、まず顎がほっそりと尖っていること、手足は細く長く中性的であること、そして威圧感の無い女性的な表情は相手に安心感を与えるということです。
人の顔というものは、食物をよく嚙む、或いは嚙み締めることでエラが張ってきます。そしてエラの張った顔は忍耐強い人相であるといわれています。
子供達が硬い物を食べなくなったといわれ始めてどれくらいが経つでしょうか・・・。
いつの間にか世の中が安易な方へ安易な方へと流れ、何かにつけて軽いものが持て囃される時代となりました。空腹が満たされさえすれば、口当たりの好い物・手軽な物・飲み下すのが容易な物が好ましいという訳でしょう。
それと並行して嚙み締めること、ひいては食物(私の子供の頃は天と地の神、そして人の魂が宿ると教えられました)に感謝する心も忘れ去られていくのではないかと思います。
そればかりではありません。最近いたる所で、子供に絶えずお菓子を与えている大人を目にしますが、定まった時間にだけ食べ物を与えるということは、自制心を養うことに他なりません。非常に動物的ではありますが、忍耐の初歩でもあります。
貧しい時代は否応無しに忍耐を強いられますが、飽食の現代では、大人が心して接していかないと子供達は心身ともにタレパンダとなることでしょう。
また、昔の親達は子供に刺激物を与えるのを当然の如く避けてきました。ところが現在では「シゲキックス」などという過激な味のお菓子も売られ、刺激物を口にする子供達も少なからず見られます。それらのことも子供の感性に影響を与えないはずがありません。
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更に心配なのは、食物の質の劣悪化です。農薬・添加物等の異物が、いつの頃からか食を侵し、これらを総て避けるのは今や至難の業といえましょう。農薬に関しては、農水省のガイドラインによって「有機栽培」や「無農薬」の表示が必ずしも安全なものではなく、消費者はただ信じるしかないというレベルですし、食品添加物も同様に、製造上のどの段階で添加されたかによって「表示免除」が許されており、真実はまた闇の中です。
これらの異物は、発癌性・アレルギー性をはじめ神経系統に作用するものも少なくありません。
例えば保存料・漂白剤として広く使用されている亜硫酸塩は代謝障害や発癌性をもちますが、清涼飲料等の保存料である安息香酸と混合すると、ストレス抵抗性に強い毒性を示します。
また、若者の主食代わりにもなるというスナック菓子に含まれるグルタミン酸ナトリウムは、神経興奮毒性のあることが判っています。その外、直接或いは間接的に精神抑うつ症を招く添加物は数知れません。
そして年間一人当たりの摂取量は、明らかな分だけでも平均6,9㎏(月刊『フードケミカル』’93年調査)、三十年間ではなんと元大関・小錦の巨体(300㎏)にも相当し、しかもその量は年々増加の一途を辿っているのです。
食品添加物を避けること、農薬汚染の無い野菜を摂ること、粗食に耐え、よく嚙んで食べること、は自然医学の主張でもありますが、実は子供の心を守る為の究極の食の在り方ともいえるでしょう。
農水省、厚生省、ましてや文部省など食の改善には期待薄で、私達は独自に、出来る限り自己防衛し、来世を担う子供達を守ってゆくべきだと思っています。