「食べる」ということ

生活改善

もう10年以上も前のことで、病院の名前も忘れてしまい、確かに書いたはずの原稿も見当たらないのですが、ある医師の方の講演内容です。

「術後の患者さんの栄養摂取は、当然のように点滴をしていたところ、たとえ流動食でも口から摂ると回復が早いことをアメリカ留学で知った。日本に帰って実践したところ、術後の患者さんだけでなく、長期間寝たきりの患者さんも起き上がり退院するまでになった」と、スライドを観せていただきながら拝聴しました。

そのころは、術後に口から食べさせる病院は他に無く、「私が全国に知らせなくてはならない」とおっしゃって、感銘を受けたものです。

そして今、その医師の方の名前を調べようとすると、すでに術後の経口摂取は当然のようになっていて、利点を唱える医師は数多おられ、特定することができません。

1991年に、解剖学者の故・藤田恒夫博士が『腸は考える』という書籍を出され、腸の重要性が急速にクローズアップされるようになりました。

地球上の生命は海から始まって、単一生命から進化してきましたが、総ての動物の元祖はヒドラのような小腸だけで生きる腔腸(こうちょう)動物だったとされています。

小腸で栄養を吸収し、陸に上がると排泄物を固形にするために大腸をつくり、食べ物を得るために口や手足を発達させ、それらのコントロールセンターとして脳が出来ました。

ですから、小腸は独立国家であり、脳の支配を受けず、独自の感知能力や判断力をもっていて、毒物が入ったときに下痢で間に合わないと判断すると、脳に命令して嘔吐させます。

脳が死んでも、栄養さえ与えれば淡々と生命を維持しますし、脳に支配されないのでストレスも無く、癌もできません。

手術後の栄養摂取を、点滴でなく口から食べることで腸を活動させると、独自のセンサー細胞がその成分に応じた消化管ホルモンを出し、標的となる内臓に働きかけます。

免疫臓器でもある腸は、毒物や外敵から身を護る「生命の見張り番」として、使ってあげることで外敵に対するバリア機能が高まり、全身の感染防御機能も高まって、傷の治りも早く、全身の炎症反応も抑えられることがわかっています。

経管栄養の第一人者である田無病院長・丸山道夫氏は、口から食べられなくなった場合、胃瘻(いろう:腹壁を切開して胃内に管を通し、栄養を流入)を行うと、腸を使うために免疫が活性化され、合併症を減らす大きな長所があるとおっしゃいます。

小腸が活動することで内臓が鍛えられ、免疫力が高まることから、やはり「食べる」という行為は、動物としてとても大切なことだといえます。

もちろん、腸を活動させることと、のべつ食べ続けることとは、全く次元の違うことだと思います。

Post a comment