生物学的教育論

生活改善, 食養生

前回ご紹介した九州大学名誉教授・井口潔氏の、生物学的な視点による教育論です。

脳には3つの層があり、第1層は動物として生命を司る爬虫類脳、第2層は感性や感情を司る哺乳類脳、第3層が知性や知能を司る人間脳です。

生まれたばかりの赤ん坊は生物のヒトであり、まだ人間ではなく(第2・3層が未熟)、生後10年までに「教育(躾)」によって人間になるとおっしゃっています。

脳の成長には順番があり、0~3歳までに生活の基本ルールを教え、第2層をしっかりさせることで精神のバランスがとれた思考回路が形成されて、次の知性・知能の人間脳が成長するとのことです。

第2層をしっかりさせるのは躾やお手伝いで、昔の日本の家庭には躾や道徳教育があり、助け合いや補い合う中で無意識のうちに脳を成長させるライフスタイルだったとおっしゃいます。

「人間は、己の大脳を良くも悪くも自分で創るという仕組みをもっている」ため、自我を抑え、自己を抑制する意識を道徳で学んで内部世界に落とし込むと、それに対応する「ニューロン回路」が創られ、人間的な大脳が設定されるとのことです。

現代は、3歳までに生活の基本ルールを教えることなく、甘やかせて育てる家庭が多くなり、「良く生きよう」とする第2層が未熟なまま、「うまく生きよう」とする次の知性・知能脳の成長を迎える子供が増えてしまいました。

第2層を鍛えることなく成人になった場合、感性・情緒脳よりも知識・知能脳の機能が巨大化し、人間性が薄れ、物やお金、自己への執着が強まり、人間関係がうまく結べなくなってしまいます。

こうした子育ての変化は、戦後、アメリカの女性解放運動に起因する自己中心主義の流入が、親の愛情過多症候群、親の子に対する過干渉を起こし「子ども中心的教育法」を助長して、「伝統の自己抑制型教育」を封建制度の遺物として顧みない重大な過ちを犯したとおっしゃっています。

日本の教育基本法は、「人間はいかに生きるべきか」ではなく「役に立つこと」を教える教育となり、「新生児をヒトから人間にするのが教育」という生物学に立脚した概念が欠如している。そして、江戸時代に制定された「自己抑制」を根幹とする「伝統的人間教育法」を理由もなく放棄したと指摘しておられます。

98歳の井口潔氏が、こうした教育論を日本中で精力的に講演しておられるのは、かつては誰もがもっていた「子供は国の財産」という共通認識から、危機感にかられての活動ではないでしょうか。

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