イカ・タコについて

食養生

平成の初めころ、「イカとタコはコレステロールが上がるから食べない」という方がいらっしゃいました。

私は「それは考えにくい」と申し上げたのですが、特に根拠があったわけではなく、食習慣の傾向と健康度、食したときの感覚から違和感があったからです。

その後、何年か経って「イカ・タコのコレステロールは、実は低かった」という報告を知りました。

調べてみると、その報告は昭和53年に、大阪大学医学部内科の山村雄一教授(後の学長)が公表されたそうで、一般市民の意識に届くのはこんなにも時間が掛かるのかと驚きます。

イカ・タコの高コレステロールが否定されたのは、コレステロールの測定法が「比色法」から「酵素法」に変わったことで、実はイカ・タコのコレステロールは低いと分かったのだそうです。

更に近年では、食品の中のコレステロールが、そのまま血中コレステロール値に影響するわけではないと考えられるようになりました。

なぜなら、体内のコレステロールの70~80%は体内で合成されることが判ってきたからです。

だからといって、高コレステロールの食品を多食すると、体内の合成能力は落ちてしまうと考えられています。

また、痛風ではプリン体を含む食品を避けるよう指導する医療機関が現在も多くありますが、食べたプリン体がそのまま体内で影響する率は低く、むしろ体内で産生された尿酸を排泄する機能を正常に保つことが大切です。

2016年のノーベル医学・生理学賞を受賞した大隅良典氏の「オートファジー」の研究によると、細胞は自分の古くなった成分を自分で分解し、特定の場所に移動させてリサイクルすることが判りました。

例えば、私たちの体を構成している蛋白質は、アミノ酸よりももっと小さな分子レベルで、絶えず入れ替わっていて、それは蛋白質だけでなく、脂質や血液、体をつくっている総ての臓器、総ての組織の構成成分が、常に流動的に代謝回転していることが判ってます。

こうなると、成分とカロリーで判断する現代栄養学では、用を成しません。

つまり私たちは、○○を食べなければいけないとか、バランスよく食べなくてはいけないとか、朝食を摂らなくてはいけないというレベルの食ではなく、本来の分解・合成の平衡系(ホメオスタシス)を壊さないために、代謝能力を健全に保つ食事が必要だということになります。

代謝能力を損なう最も分かりやすいのは「過食」で、肥満は取りも直さず代謝能力の低下の現れでもあります。

そして、遺伝子が自分に近い動物食、体が毒物として判断する化学・合成物質、人工的に遺伝子や成分に手を加えた植物食、精白してバランスを欠いた食品などが、代謝を乱す食べ物として挙げられます。

自然医学では、人間の食性に近い「正しい食事」というものがあると考えており、700万年前頃にチンパンジーと共通の祖先からヒト(初期猿人)が分かれたあたりまで遡って、人間の食というものを考えています。

日本人なら和食を中心とした食事でベースをつくっておけば、たまに脱線しても本来の代謝能力が働いて、体内の過不足を調整してくれるでしょうし、感染症に対しても最大限の防御機能を発揮するはずです。

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