自然医学からみたゲノム編集

自然医学, 食品

2019年10月1日から、ゲノム(全遺伝情報)編集食品の販売が可能になり、流通していると考えられます。

日本政府は、環境省、厚労省、農水省ともに「ゲノム編集食品は安全」との見解を示し、表示義務もありません。

遺伝子というのは、総ての生物における生命の設計図で、DNAの二重らせん構造の中で蛋白質生成に関わる指示情報が暗号のように並んだ部分です。

その指示情報をもつ部分は約1.5%といわれており、その他の部分がどのような役割をするのかは明確ではありませんが、遺伝子として働かない部分も含むDNAの文字列の総てをゲノムと呼んでいます。

自然界には「種の壁」というものがあって、犬からは犬の子供、人間からは人間の赤ちゃんしか生まれないというように、本来、遺伝子は種の壁を越えて移ることはできませんでした。

それを可能にしたのが、1970年代中頃の遺伝子組み換え技術で、ホウレン草の遺伝子を豚に入れ「ヘルシーな豚肉」なども開発されました。

現在では、遺伝子工学技術によって、ゲノムの切り・貼り・つなぎ・交換など自由自在です。

ゲノム編集というのは、種の壁を超えることなく、DNAを切ったり貼ったりデザインすることです。

編集技術には、以下の3パターンありますが、日本の技術では今のところ1のみで、2、3は開発途上とのことです。
1、DNAの狙った部分を切って、変異を期待する。
2、狙った部分を切断する酵素を入れるときに、DNAの鋳型も共に入れ込む。
3、狙った部分を切断する酵素を入れるときに、外来の遺伝子にあたるDNAを共に入れ込む。

遺伝子組み換えもゲノム編集も、食物として摂った歴史が浅いことから「安全性は不明」とされますが、遺伝子組み換えについては、20年以上も前から動物実験による内臓異常や出産異常、死亡率の上昇、アレルギーや発癌性など多くの報告がなされています。

ゲノム編集について政府筋(農林水産技術会議)は、「突然変異を人工的に起こしただけなので安全」という立場です。

しかし自然医学では、自然界に突然変異は無いと考えています。

それは生命の起源まで遡りますが、ダーウィン(ネオ・ダーウィン)の「生物は突然変異によって機械的に進化する」という説を否定し、生命の自然発生(現在では有力説)こそ生物の進化の大前提で、その進化は自然界における「連続した流れ」であると考えています。

生命現象をはじめ自然界の総ては、断片的に対立しているものは存在せず、らせん状に全部がつながってバランスを保ち、それらの現象には可逆性があります。

詳しい内容は省きますが、自然界はもちろん、生物界、生体内の様々な現象は、あるきっかけで容易に逆転し反応系が切り換えられます。

癌は細胞が突然暴走し始めるといわれて来ましたが、いまでは生活習慣病であることが認められており、食事によって反応系を逆転させることで治癒していきました。突然暴走し始める前に、それなりの理由が背景としてあったわけです。

つまり、人工的にゲノムを切り貼りすることは、とても自然界に受け容れられるとは思えません。

自然界の一部でもある私たちの体は、どんなに実質的に同等と解釈して合成しても、人工的なものを見逃すほど鈍感ではなく、部分的な組み換えや干渉の影響がバランスを乱し、その乱れを打ち消すための体内変化を招いてしまいます。

天然にも存在するトランス脂肪酸を人工的に合成し(マーガリンなど)、大惨事になったいま各国で販売禁止になったり、夢の電力と期待された原子力発電が終息を余儀なくされたりと、私たちは失敗を繰り返してきました。

遺伝子組み換えはもとより、ゲノム編集も同じ道を歩むだろうことは、私たちの先の世代で悔やまれる時期が来て証明されるのだろうと思います。

※参考文献:福岡伸一著「生物と無生物のあいだ」、自然医学誌2006.2山岸眞弓「自然医学教室」、札幌通信2020.8高岡和夫「ゲノム編集は本当に安全?」

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