医療センター

病気

私の入院した医療センターは同系列に総合病院もあり、両者の違いを看護師さんに伺ったところ、医療センターは「急性期医療と先進医療」、総合病院は「慢性疾患の医療」とのことでした。

入院して最初に気付いたのは、医療センターは医師も看護師も若く、どの看護師さんも驚くほど親切丁寧で、過去に見て来た医療機関と違って「サービス業としての教育も行われているのだろうか」と思いました。

私の主治医も若い方でしたが、幸運なことにとても思慮深い方で、私が30年も化学薬剤を摂取していないことを告げると、少ない量の利尿剤から投薬し、それでも効きすぎると更に半量にして、副作用が出ると投薬なしで様子をみるなど、納得できる投薬手順を踏んでくださいました。

ところが、たまたま主治医が休みの日、薬の副作用でひどい脱水症状を起こしてしまいました。
上の血圧65mmHg、下が40mmHg、脈拍40で動けなくなり、看護師さんによると顔色が白や青を通り越して土色だったそうです。

そこで、休日の当番医の方が男女2名駆けつけて、リンゲル液の点滴(水分補給)を行いました。

看護師さんが点滴をゆっくり落とそうとしたら、男性医師が「ペットボトル1本の水を入れたくらいで心不全にはならないから、全開で入れちゃえ」とおっしゃって、私は「いいえ、ゆっくり落として下さい」と申しました。脱水だからと一気に水を補充するのではなく、生体が急激な変化で戸惑わないようにしたかったからです。

すると女性医師が、「徐脈だから脈を速くする治療をしましょう」と言われるので、私は「頻脈が続いて心不全になったのですから、脈を速くする治療は嫌です」と申し上げると、しばらくして脈拍が戻ってきたので「脈を早める治療はやめます」との伝言がありました。

ところが、リンゲル液500mLの点滴が終わったあと3時間ほど排尿が無かったので、再び女性医師の方から看護師さんを通し「利尿剤を投与します」と言ってきました。

さすがに私は不愉快になり「僅か500mLの水分を、私の体はいま必要なところに優先順位で分配しているのであって、尿として捨てる余裕はないはずです。いま利尿剤を投与したら、私は明日起き上がれないかも知れません。私は機械の部品ではなく生身の体なのですから、『時間を掛けて様子をみる』ことをしてください」と申しました。

やがて思った通り、時間が経つと排泄も問題なく戻り、「利尿薬の投与はやめるそうです」との伝言をいただきました。

私が入院した病棟は産科病棟で、ベッドの空きはそこしかないらしく、糖尿病の方も隣のベッドに入院して来られました。

口に麻痺が出たとかで入院しステロイド治療をされたようで、夕食前に血糖値を測り150mg/dlを超えるとインスリン2単位、200mg/dlを越えるとインスリン4単位と機械的に投与されていました。

口の麻痺が治まったのか退院されるときご挨拶をしたのですが、私は「生活を変えないと、入退院を繰り返しながら悪化されるだろうな・・」と思い、「お元気で」とは言えず「お気をつけて」と申し上げてお別れしました。

テレビで救急救命などのドラマを観ていると、失われそうな命を様々な薬剤や技術を駆使して救い上げ、いまの医療はすごいなぁと思うのですが、救急でない一般の治療にもそうした思考が持ち込まれているようで、「日本人の平均寿命は、これから間違いなく短くなっていくだろうな」と思いました。

そして、私以外の患者さんは例外なく睡眠導入剤を服用しておられ、そういえば私が入院した初日も「眠れなかったら導眠剤がありますから言って下さい」と気軽に言われたのを思い出し、すべての症状に薬剤を2重、3重・・と重ねていくことに怖さを感じました。

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